『さんすうの本』あとがき公開(9/14)

私の書いた絵本『さんすうの本』が、山と渓谷社から、9月17日に発売になります。

それに先立って、、あとがきの一部が、山と渓谷社のウェブページに公開されました。

URLは以下のようです。拡散歓迎です。

   https://note.com/yamakei90_/n/n142cb07dc7b5

 

リンクに飛ぶのが面倒な方のため、以下に文面を貼り付けておきます。

 

 

 

あとがき(保護者の皆さまへ)

 

 

なぜ本書を書こうと思ったのか。それを最初にお話しします。

私は、18歳から定職をうるまでの20年あまり、家庭教師で収入をえていました。教えた生徒はのべ100人以上、小学校低学年から大学受験生まで。他にも、大学院の自主ゼミで数学を教えていました。おかげで、小学校の算数や中高の数学が将来の専門にどうつながるのか、流れが体に染みついています。

教え子は、みな似たようなところでつまずきます。そこをちょっとサポートすると、調子が出てどんどん伸びます。やりがいがある半面、複雑な気持ちになります。家庭教師はぜいたくです。塾や予備校だってお金がかかります。「ちょっとサポート」がえられない子どもたちは、どうするのだろう。

家でほうっておかれているかも。ちょっとのつまずきが、そのうち「さんすうわからない」「さんすうきらい」になって、その子の将来を狭めてしまうのではないか。

学校の先生はがんばっていると思います。でも、授業のやり方はがんじがらめに決められていて、生徒一人ひとりの進度や理解によりそって、授業を進めるのは無理です。授業について行けなければ、置いてきぼりです。そんなふうに、心ならずも学校でつらい時間を過ごしている子どもが、大勢いると思います。

学校の算数と折り合いの悪い子どもも、きっと、数の世界の魅力がわかります。数の世界の楽しさに、触れるチャンスがなかっただけです。そのチャンスをつくりたくて、『さんすうの本』を書くことに決めました。

この本は、教科書でも参考書でも、問題集でもありません。絵本です。ふしぎの国に迷い込んだアリスのように、すみれはナンバーランドに招かれます。

そして、数の世界のひみつを、少しずつ教えてもらいます。小学校の算数がなにをやっているのか、全体が見通せるようになるのです。

この本は、学年がありません。1年生の最初から、6年生まで、いや、中学や高校の内容だって混じっています。低学年の子は、この先どんなことを習うのだろうと、のぞいてみることができます。高学年の子は、これまでの復習をかねて、読み物として楽しめます。

だれだって、なにかが理解できるのは、楽しいんです。楽しくなければ、算数じゃない。計算が速いかおそいか、答えが合っているかどうか。そんなことは二の次です。算数を好きになってほしい。それが私の願いです。

でもこの本が、肝心の子どもたちの手に届くのかどうか。
定価が1700円は、安くありません。スーパーで値段を気にして買い物しているふつうの感覚だと、ためらう金額です。そこで、図書館や学級文庫に収めてもらうのが、まず目標です。それなら、家計に余裕のない家の子どもも、借りて読めるからです。

本棚に本が少ない児童施設などがもしあれば、版元に連絡いただければ、寄贈できるかもしれません。とにかく、必要な子どもたちに本を届けたい。そして、日本の教育を豊かで楽しいものにしたいと思います。

小学生も心配ですが、大学院生も心配です。大学院を出ても就職がなく、アルバイトでつないでいる人びとを、オーバードクターといいます。かつて私もそうでした。塾や予備校には、こうした人びとが大勢います。

この本に出てくる天使のじょうじやあんなは、彼ら彼女らの姿です。日本の学術の将来は彼らにかかっています。でも彼らはきちんと処遇されず、苦しんでいます。そうした人びとに、光が当たってほしい。その願いも、本書にはこめられています。

2022 年8 月1日  橋爪大三郎

 

連絡先

〒145-0062
東京都大田区北千束1-2-5 廣瀬ビル201
TEL 03-6459-5731 / FAX 03-6359-5746
hashizm★officehashizume.jp
(★を@にしてください)

Contact Us

1-2-5-201 Kitasenzoku,
Ota, Tokyo 145-0062 Japan
+81-3-6459-5731 fax +81-3-6459-5746
hashizm★officehashizume.jp
(Please replace ★ with @)